読書感想文


忍・真田幻妖伝
朝松健著
祥伝社ノンノベル
2003年9月10日第1刷
定価895円

 「真田三妖伝」に続く第2巻。
 猿飛佐助は天海僧正を探して寺に忍び込んで見つけたものは、張型を使って淫らに悶える春日局の姿であった。彼女から張型を奪って調べると、その内部は空洞になっており、立川流の真言が彫り込まれていた。そして、張型は金と化してとろけてしまう。師匠である戸沢白雲斎を訪ねた佐助や霧隠才蔵たちは、そこで剣豪岩見重太郎と出会い意気投合する。しかし、白雲斎は野干獣という怪物によって殺されてしまう。野干獣の正体はかつての大久保長安であった。さらに、佐久夜姫との戦いの最中に現れる黄金獣。佐助と佐久夜姫は、長安によって導かれ、地底の奥深くに落下していく。地上では、林羅山一派、天海一派、そして真田十勇士たちが立川流の秘密を探ろうと三つ巴の戦いを繰り広げる。豊臣家と徳川家の根幹を揺るがす秘法の真相とは。そして長安の陰謀は……。
 本書では暗号ミステリの要素などもうまくちりばめながら、前巻で張った伏線を生かし切り、世界を揺るがすような大きな秘密を明らかにしていく。そこに純愛が、政争が、欲望が、正義が、これでもかと言わんばかりに盛り込まれていく。
 本書でも人間の業の深さが派手なアクションとともに描かれている。ここでは「欲望」という麻薬が登場人物たちを麻痺させてしまう。だからこそ、佐助と佐久夜姫の純愛の美しさが強調されるのである。
 大坂の陣に向かって、物語は大きく進んでいく。そのテンポのよさも特筆しておきたい。次巻も楽しみでならない。

(2003年9月10日読了)


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