読書感想文


デス・タイガー・ライジング2 追憶の戦場
荻野目悠樹著
ハヤカワ文庫JA
2003年9月30日第1刷
定価700円

 「デス・タイガー・ライジング1 別離の惑星」の続刊。
 軍医として出陣したミラは、キバが負傷して自陣にいるという情報を得る。なんとかしてキバに会おうとするミラであったが、〈虎〉部隊は軍事最高機密のた め、容易に接触できない。やはり夫を〈虎〉部隊にとられたアグネーゼの協力でなんとかキバと再会することができたミラだったが、キバは脳手術のため感情を 失い、かつての彼とは別人のようになっていた。ミラは軍規違反で逮捕され、禁固刑を受ける。サイゴーンとの戦いに再び出陣したキバは、しかし、ミラとの再 会の影響で、少しずつ感情を取り戻し、戦いの際に体が動かなくなるという失調をきたしていた。戦闘は膠着状態に陥り、〈虎〉部隊もサイゴーンに降下し、地 上戦に投入される。そして、ミラは禁固刑を解かれ、地上部隊に合流するためサイゴーンに降下する。激しい戦いの中で、キバとミラは再会することができるの か……。
 本巻では、恋人と再会したいミラの一途な思いが徹底して描かれる。そして、その真心が手術によって感情を失ったはずのキバを変化させていく。まさに、典 型的なメロドラマである。主役は主役らしく、悪役は悪役らしく、わかりやすい図式にのっとって物語が進む。そういうものを嫌う人もいるかもしれないが、私 はここまで徹底してくれていたら、その通俗性がかえって楽しいと思う。
 次巻ではミラによるキバへのリハビリテーションが行われていくことが予想されるし、作者はそれを裏切ることはないだろう。それでいいのだ。そこにメロド ラマの面白さがあるのだから。
 ところで、「双星記」でもおなじみのタイガースの外国人選手と同じ名前の登場人物だが、本巻ではボウクレアとデード(作中ではデートとなっているけれ ど、たぶんデードを意図しているのでしょう)が登場。次は誰かな。こちらの遊びもタイガースファンにとっては楽しみである。

(2003年10月12日読了)


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