「蒼空の光芒」に続く
シリーズ第2巻。
満州でロケットエンジン開発にたずさわる伊勢崎は、ジェットエンジンを搭載した戦闘機の開発も手がけることになる。映画『零戦の勇士』で人気が出てし
まった飛行士坂井三郎は、その人気があだとなり満州でジェット戦闘機のテストパイロットにさせられることになる。しかし、伊勢崎、そして桜井はジェットエ
ンジン、ロケットエンジンの開発をなしとげ、新しい戦闘機「烈風」を完成させる。母機「富嶽」に搭載された「烈風」は、坂井の操縦で成層圏に飛び出し、世
界初の有人宇宙飛行を達成する。一方、国際政治でイニシアティヴをとろうとするソ連では、ドイツ、アメリカに次いで原子爆弾を完成させ、それを満洲攻撃に
使用する作戦を立てる。満洲に迫る危機……。
シリーズ化されたことで、前巻の伏線がかなり生きてきている。戦争は満州国が国際的に認められたこともあって、アジアでは膠着状態になっている。そのた
め第二次大戦が激化する前に冷戦状態になり、兵器の開発競争が激化するという設定になる。したがって作者の意図する兵器開発の様子を細かく描写した架空戦
記という形がかっちりとできあがってきている。
特に坂井三郎が有人宇宙飛行を一瞬であっても成し遂げるシーンはなかなか感動的で、作者はこれが書きたいがためにこのシリーズを書き始めたのだろうと推
測させられる。もちろん前巻でその気配は少し見えてはいたのだが。もしシリーズ化されていなかったらこのシーンは出てこなかったわけで、そういう意味で本
巻が刊行されたことには大きな意味があるだろう。
今後は原子爆弾を持った国のにらみ合いという状況で物語は進む。現実の冷戦とどのように歴史を変えていくかに注目したい。