「世界最高のクラシック」を
補完する第2弾。
本書で著者は今の時代に生きていく上での楽しみがあまりにもないことを嘆き、極上の演奏に出会うことが生きていくためには(自分には)必要だ、という主
旨のことを述べている。したがって、本書で紹介されているクラシックはそういった人生を楽しく生きるための(著者にとって)極上のものばかりということに
なる。
本書では、例えばバロック音楽の演奏家でもカール・リヒター、ジャン=フランソワ・パイヤール、ウィリアム・クリスティという全く対照的な指揮者を紹介
し、それぞれのすばらしさとその違いを読み手に伝えるという構成をとっている。
本書でも前巻と同じく作者独特の辛辣な書き方を極力控えている。良いものを良いと書く、ただそれだけが目的で書かれた本といえるだろう。逆にいうと、前
巻と本書でとりあげられなかった指揮者の演奏に関しては、基本的には聴く必要がないと著者は暗に訴えかけているといえる。これほど厳しい批評はあるまい。
本書には私の好きな演奏も多く含まれており、読了後、それらのいくつかを棚から取り出して聴いてみた。そうさせるだけの力を本書は持っている。一定の傾
向に偏った「名盤ガイド」ではないので、ふだんあまりクラシックを聴かない人にもお薦めしたい一冊である。