「蛇 ジャー 上」に続く完結編。
中西空がピンク・ドラゴンの手がかりを求めているうちに知り合った青年、リュイ。彼は龍を見た友人、鉄平の行方を求めて琵琶湖へやってくる。何かに導かれるように音無刑事と出会うリュイ、そして菅野老人。一方、舞子はピンク・ドラゴンによって自分が理想としていた世界に導かれる。しかし、その世界で彼女は自分が陽一の事を心から愛していることに気がついた。ピンク・ドラゴンは、舞子に陽一の行方を自力で探せと告げ、原始時代に連れていかれる。陽一を見つけたら、もとの世界に戻すという約束を信じ、古代の象の踏み固めた道を舞子はたどる。舞子は無事に現代にたどりつくことができるのだろうか。そして、ピンク・ドラゴンがここまで手のこんだ仕掛けまでして求めていることとは……。
古代に飛ばされた舞子たちが、自然の美しさに目覚め、そして現代に戻った時に、自分たちがなじんでいる便利さをありがたいと思う。この当たりが特に作者が読み手に伝えたかった部分なのだろう。
本書はミステリ作家の書いたファンタジーである。そう実感させられるのは、ピンク・ドラゴンの仕組んだパズルのような仕掛けを解きほぐしていくあたりである。なぜドラゴンはここまでしていろいろな人物を巻き込むような仕掛けをしなければならなかったのか。そこのところが私にはよくわからない。謎を解くために謎を作るというミステリ的な発想がこの物語の芯にあるのではないか。そのように感じられてならないのだ。
本書は、メッセージ性の強い小説である。だからこそ、入り組んだ仕掛けはそれほど必要がなかったのではないかと思う。なぜ登場人物たちだけにドラゴンが見えたのか、その部分こそ大切なのではないかと感じた。もう少しファンタジー色を強く打ち出してもらいたかった。あるいは伝奇ロマン的な要素をもう少し盛り込んでもらいたかった。それができない作者ではないだろうに。
(2003年12月3日読了)