「Vヴィレッジの殺人」に続くシリーズ第2弾。
私立探偵のメグはV村の出身。彼女たち一族は吸血鬼なのであるが、メグのように人間社会にまじって生きているものもいる。やはりV村出身の探偵高原咲和子に頼んで浮気調査の仕事を回してもらう。夫からの依頼で、韓国出張中に妻が浮気をしていないかを見張る仕事だ。ところが、見張っているうちに彼女と臨時助手の青海太郎は不審な点に気がついた。見張りの対象である妻、姫川朝子がいつまで立っても寝室に入った形跡がないのだ。家宅侵入した二人が見つけたのは、韓国にいっているはずの夫、均の血まみれの死体。警察に通報することもできず、咲和子に相談していると、こちらもV村出身である糸井刑事がやってきた。彼は死体のそばにクリスマスローズという花がまき散らされている連続殺人を追っており、なんと姫川朝子の死体がクリスマスローズとともに自宅で発見され、均の死体など跡形もないというのだ。死体すりかえ事件と、連続殺人の、二つの謎を追うメグがたどりついた真相とは……。
前作同様、吸血鬼という設定をうまく使って謎を作り上げるという変格ミステリ。人間社会に溶け込んで生きていこうとする吸血鬼の哀感を盛り込みながら、軽妙な会話とテンポのよい展開で読ませる。肩の凝らない楽しいものになっているのである。
もっとも、軽妙な部分と吸血鬼や女性たちの愛憎という重いテーマを両立させるというのはなかなか大変なことで、本書でもそのギャップが完全に埋められているかというと、ちょっとしんどいところはあるかなと感じさせた。
それと、せっかく吸血鬼を主人公に選んでいるのだから、もう少しホラー趣味も添加してほいところだ。謎を作り出すためだけの手段として吸血鬼を使っているというようにもとられかねなくなるだろう。軽妙な味よりも、テーマの重さに重点をおいてほしいと、私は感じている。
(2003年12月27日読了)