「デス・タイガー・ライジング2 追憶の戦場」の続刊。
ミレとキバは、サイゴーン軍の捕虜となる。しかし、ベルゼイオンとサイゴーンの激しい戦闘が始まり、脱出。戦闘地域に残っていたボウクレア家の人々も、彼らと合流する。彼らを助けたのはメッサージュの秘密部隊。そして、その中にはミレの兄、ミハイルも協力者として参加していた。脱出の際に出た怪我人を手術するため、医者であるミレがかりだされる。キバは、手術の時間を稼ぐため戦場に出て戦車部隊を攪乱する。手術は成功したが、ミレはそのままメッサージュ軍に連れていかれる。行方不明となったキバは、ボウクレア家の一員となって絵筆を再び取る。その作品を雑誌で見たミレは、キバが無事でいることを確認し、なんとかして居場所を突き止めようとする。しかし、ボウクレア家の人々はミレとキバを会わせようとしない。しかも、ミハイルはミレを騙してキバの居場所がわかった時点でその身柄を確保しようとしていた。ミレは自ら囮となってメッサージュ軍をひきつけ、キバを逃がす。ベルゼイオンとメッサージュの話し合いの場に、オブザーバーとして連れていかれるミレ。ボウクレア家から離れてミレを探し求めるキバ。ベルゼイオン軍の中で独自の行動をとりだす〈虎〉部隊。恋人たちの運命は、戦争の鍵を握る作戦に翻弄されていく……。
スペース・オペラ・メロドラマは、いよいよ『君の名は』的な展開を見せていく。感情を取り戻しつつあるキバと、全てを捨てて彼と再会しようとするミレは、語らうゆとりもなくすぐに別れ別れになってしまう。
キバに感情が戻り始めたことで、物語は大きく動く。そして、物語は戦争の帰趨を占う作戦の核心へと進んでいく。このあとに待ち受けるラストは、ハッピーエンドかデッドエンドか。おそらくハッピーエンドであろうと予想はつくのだが、『双星記』の展開にそって〈虎〉部隊がどのような働きをしていくのか、興味の焦点はそこらあたりに移りそうだ。どのような着地点を作者は用意しているのか。完結編を待ちたい。
(2004年1月1日読了)