「守護者はぶっちぎり。」の続刊。シリーズ完結編である。
滋也と楓が術をかけると、兎のツユネブリが巨大化した。「イフカ」の社員たちは雷神と化し、隆生と結宇を狙う。滋也と楓もその実体を現し、戦いが始まった。法印美和もまた、その正体を明らかにする。滋也はツクヨミ、楓はカエデ。そして、美和はイザナミ。イザナミは、新しい神が出現して世界を作り直すという。なんと、その神は隆生なのだ。その言葉が信じられない隆生だったが、神々との戦いに巻き込まれるうちに、自分の力が顕現してくることがわかってくる。隆生ははたしてどのような世界を作り出すのか。そして、神話が現実と密着していた世界に戻そうというイザナミの目的は達せられるのか。
本巻に至り、物語は「月と炎の戦記」とつながる。そして、シリーズのタイトルが「月と闇の戦記」であることの理由も明らかになる。ここでの主人公の役割は、物語を一から新たに作るか、自分の知っている物語を続けるかの選択者である。
物語は、語り手によってどうにでも変わる。そして、その物語は一つの小宇宙である。神話もまた、物語の一つである。作者は、世界の物語性というものを、軽快なコメディタッチで描こうとしていたのではないだろうか。もっとも、本巻ではコミカルな味つけは最小限に抑えられ、シリアスな展開になっていくのであるが。
私の趣味からいうと、再び混沌が訪れ、新たな世界が生まれるという話に魅力を感じる。しかし、作者は若い読者に対してそこまで風呂敷を広げるつもりはなかったようだ。そういう意味ではまとまりがよく安心して読める反面、現実の危うさなどの描写の切迫感があまり感じられないのが残念である。
(2004年1月14日読了)