読書感想文


てるてる坊主の照子さん(中)
なかにし礼著
新潮文庫
2003年8月1日第1刷
定価400円

 「てるてる坊主の照子さん(上)」の続巻。
 長女の春子にはスケート選手としての才能があった。梅田のスケートリンクにやってきた東京の指導者稲垣に春子のレッスンを頼む照子。次女の夏子はジュニア選手権で最高得点を出したにもかかわらず、年齢規定で1位とはならず、スケートをやめるが、芸能プロからのスカウトが来て子役で梅田コマなどに出演するようになる。激しい練習のをやり遂げようとして我慢を重ね、春子は病に倒れる。そして、照子も胆石で入院。一方、春男はふとしたことで知り合った浄瑠璃のお師匠さんと浮気をしていたことが発覚し、岩田家はてんてこまいとなる。
 長女と次女に母が注ぐ異常なまでの情熱に対し、三女と四女はほとんど振り向いてもらえない状態が続く。主人公はいうまでもなく母親の照子であり、彼女を中心として話が進む以上、物語は長女と次女に焦点が当たるのは当然かもしれないが、母親不在の間の父親の行動が浮気だけではあるまい。父と、見放されたかっこうの下の娘たちの様子などにも目が配られていたら、もっと家族というもののあり方を考えさせる深みが出たのに、と思う。
 作者は下巻のあとがきでなぜ上の二人の才能は開花し、下の二人はそうでなかったかということをこの作品から描き出そうとしたという内容のことを書いているが、上の二人への母の力の入れ方は尋常ではなく、そこでエネルギーを使い果たしたのだなと思うのみである。
 物語はいよいよ佳境。娘たちと母親の関係がどう変化していくかが下巻の見どころとなろうか。

(2004年1月31日読了)


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