「てるてる坊主の照子さん(中)」の続巻。完結編である。
体調の戻った照子に、子離れの時期がやってきた。長女の春子は伸び悩み、照子は自ら叱咤激励するのをやめてスケートをはじめた原点に戻れと言う。そして、次女の夏子はマネージャーが東京に戻るのをきっかけに東京へ行って芸能活動を続けることになる。春子は初めて国体で優勝、夏子は森繁久彌主演のテレビドラマに抜擢されて出演する。しかし、春男の母ヨネは胃ガンで死去。死に目にあえない夏子の身替わりとなってヨネの手を握った四女冬子は、冬子として祖母と別れられなかったことに不満を抱く。やがて、春子はオリンピック出場をかけた試合に臨み、夏子は歌手デビューを果たし紅白歌合戦出場の希望も出てくる。岩田一家にめぐりくる幸福の向こうには……。
照子という女性の執念は、彼女の手を離れた娘たちに乗り移るかのようにして花開いていく。それでも、春子はどうすべっていいのか悩み、夏子は「お母ちゃんが喜んでくれたらうちはそれでよかった」と泣く。親の子離れ、子の親離れが、本巻では極めて劇的に描かれる。それにしても影の薄いのは三女の秋子である。冬子には姉の身替わりで祖母のいまわの際に臨むという場面が用意されているが、秋子にはそれすらない。この作品が結局は成功をおさめた姉妹とそれを育てた母の物語という図式に終ってしまったのは、かえすがえすも残念である。
本書が原作となっているテレビドラマ「てるてる家族」では、主役は冬子である。テレビのスタッフは、影の薄い下の姉妹をクローズアップすることにより、原作に欠けている奥行きを出そうとしたのだろうか。
作者が狙った、四人姉妹のうち上の二人が特別な才能を発揮した理由に関してははっきりとわかるように書かれているが、下の二人が「変哲もなく生きる」理由に関しては描き切れなかった。そのうちの一人、冬子が作者の実の妻であるということも関係していたのかもしれないが、だからこそそこをもっと追求してほしかったのである。
(2004年2月1日読了)