読書感想文


クラッシャージョウ9
ワームウッドの幻獣
高千穂遥著
朝日ソノラマ文庫
2003年10月30日第1刷
定価552円

 「悪霊都市ククル 下」に続くシリーズ最新作。10年の時を超え、シリーズが復活した。
 ノフロロとカルロスの二人の富豪が、身辺警護のために2つのクラッシャーのチームを呼び寄せた。ジョウのチームと、”地獄の三姉妹”の異名を持つダーナ、ルー、ベスのチームである。父親の代からのライバル同士である2つのチームは、富豪たちが主催するミスコンテストの会場に現われたテロリストの襲撃を防いだ。2人の富豪は惑星ワームウッドに幻獣アバドンを狩るためにおもむく。アバドンは、これまでいくつもの調査隊を全滅させてきた未知の怪獣である。どちらが先にアバドンを捕獲するかを賭ける2人をそれぞれ護衛するクラッシャーたち。そして、テロリストは彼らの惑星突入のタイミングに合わせてまんまとワームウッドに潜入する。アバドンの持つ驚異的な力とは何か。テロリスト、そして幻獣、と戦いながらもライバルの存在も意識しなければならないというややこしい状況で、ジョウの動きは雇い主によって制限されていく。
 さすがはベテランの味。ストーリー運び、二重三重の仕掛けなど、手練の技を感じさせた。ヤングアダルトというジャンルを切り開いた作家が、その出発点といえるシリーズの最新作で貫禄を見せたといっていい。
 しかし、なぜ今さらシリーズを再開しなければならなかったのか。その意味が私には判然としなかったのも事実だ。13年前とほとんど変わらないタッチで書かれる最新作は、新装版の刊行に合わせたものなのだろうが、せっかくシリーズを再開させるのであれば、中ぶらりんになっていたシリーズをどう完結させるのかということも視野に入れたものであってほしい。パイオニアたる作者のすべきことは、往年のシリーズの再現だけであってほしくないというのは私の勝手な思いなのだろうか。

(2004年2月6日読了)


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