読書感想文


カラミティナイト I I I
高瀬彼方著
ハルキ文庫ヌーヴェルSFシリーズ
2004年1月18日第1刷
定価940円

 「カラミティナイトII」の続巻。
 〈慟哭の三十人〉の標的となった鹿山美由紀を守るため、智美は下校時にわざわざ隣の液化ら電車に乗って彼女についてまわる。しかし、美由紀の親友である凛がめざとく智美を見つけ、尾行しないと約束させられる。智美は〈黒の騎士〉に変身すると忍とそっくりになるのを利用し、変身した姿で美由紀を護衛する。美由紀がまだ忍のことを恋人としてあきらめていないため、護衛はうまくいったかに思われたが、智美を待って毎日ハンバーガーショップにいる忍と優子の写真をとった同級生がおり、その写真を美由紀の同級生である兄を通じて見せてしまう。本当のことを言えない智美。どうしてよいかわからなくなったところに、〈慟哭の三十人〉の刺客が現われて美由紀を襲う。智美は騎士として敵と戦う。
 少女の揺れ動く細やかな心の動きを作者はたんねんに綴る。親友であるとしんじる智美と優子の間のちょっとした行き違いや、自分のために人を巻き添えにできないという理由から積極的に動こうとしない忍の態度、そして恋をあきらめ切れない美由紀の心情。
 しかし、細かく描けば描くほど、物語の展開のテンポが悪くなっているのも事実である。もうすこしメリハリがあれば読みやすいのだが、主人公たちのはがゆいまでの繊細さが物語からダイナミックさを奪っているようにも思えるのである。そのあたりのさじ加減は難しいだろうし、主人公たちの心情を書き込むことによってテーマが読み手に伝わるという部分もあるだろう。
 美由紀という新たな友を加えた智美と優子がどう変化していくか、続巻に期待したい。前巻から本巻まで出版の間隔があいたが、作者はそれだけ本巻を書きすすめるのに時間をかけてしまったということだろう。その苦しみが読み手に伝わってしまうのは、こちらとしても苦しかった。次はそういうことのないようにがんばってほしいものである。

(2004年2月15日読了)


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