「終の神話・天泣の章」に続くシリーズ第27巻。
柿色の衣を着た鬼の正体はは須佐之男命であった。天岩戸神話で須佐之男命が演じさせられることになった役割は、実は凶星、天津甕星が行ったことだったのである。弓生たちは須佐之男命に導かれるように、天津甕星を封じるために石上神社の神剣を鹿島神宮に移そうとしていたのである。高良の進言もあり、万全の体制を敷いて神剣を奪いに行った弓生たちだったが、彼らを待ち受けていたのは中央の術者たちだった。高良の内通があったのだ。保護のため神剣を移動させる中央の御師だったが、弓生たちが追いついた時、高良のとった行動は……。そして、神剣を奪い取った弓生と聖を待ち受ける別の敵とは……。
本巻で退場することになる高良は、「無外」という存在だと設定されている。戸籍もなく、家族もなく、ただ日本という地を守るためだけに生きる「無外」の民。作者はこのような人物を設定することにより、国家を超えた「クニ」という概念を私たちに呈示する。それは、統治機構ではない。自然や習俗、民俗全てを含んだ風土そのものなのである。
物語は着実に動く。神剣は無事に鹿島に届くのか。そして天津甕星とその動きに乗じる天狗を封じることができるのか。人間のちっぽけな力が神に対抗していく姿に、思わず手に汗握る展開となっているのである。
(2004年3月6日読了)