読書感想文


エターナル・ラヴ
藤木稟著
祥伝社
2004年2月20日第1刷
定価838円

 「オルタナティヴ・ラヴ」に続く連作シリーズ第2弾。
 遺伝子操作で感情を抑えられた男性と感性のみを向上させた女性の恋愛関係を描いた「二人の記念日」。事故により瀕死の状態に陥った宇宙飛行士は、人工頭脳と義眼を用いて蘇生させられるが、彼は無機物にしか美を感じられなくなっていた……という「火の鳥・復活編」と同様の設定で、主人公と生身の恋人の純愛を描き出す「旅立ちの時」。クローン技術を用いて若返った老夫婦に約束されたはずの永遠の愛のもろさが綴られる「エターナル・ラヴ」。以上3編、前巻と同様、様々な愛の形をSFとして表現した作品集である。
 前巻のようなジェンダー的な要素は抑えられ、特異な設定のもとで愛はどのような形を取り得るかが主たるテーマとなっている。発表媒体がレディース・コミック誌であるからだろうか、内容的にはかなりロマンティックな作りとなっていて、前巻ほど突き詰めた感じにはなっていないが、その分、「愛」とは何かというテーマを巧みに呈示しているように思える。
 もう少し深く掘り下げてほしいなと思わせるけれども、登場人物の揺れ動く気持ちを読者が感情移入できるように表現できる技法に作者の小説のうまさを感じた。レディース・コミック誌でSF恋愛小説の連作をするという作者の挑戦は成功しているのではないだろうか。

(2004年3月15日読了)


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