読書感想文


ストーンエイジKIDS 2035年の山賊
藤崎慎吾著
光文社カッパノベルス
2004年3月30日第1刷
定価933円

 「ストーンエイジCOP」に続くシリーズ第2巻。
 公園に住むストリートチルドレンたちのうち、山などで狩りをして自給自足の生活を送っているグループは、自分たちのことを「山賊」と呼んでいた。彼らは公園でホームレスを襲いその肉を喰らう怪物を目撃する。その怪物のまわりには鴉が飛び交う。また、公園には感情を持たない「緑の子」と自らを呼ぶグループもいるが、彼らはペットボトルや発泡スチロールを主食とし、独自の神を信じていた。「山賊」の一人クシーは、彼らが自己防衛のために設置していた監視カメラを奪いに来た「緑の子」の一人であるナインという少女に、他の「山賊」とは違う感情を抱き始める。その頃、警察は公園からホームレスやストリートチルドレンを一掃する計画を立てていた。放浪の旅から帰ってきた滝田、警官たちにまじって内状を偵察していた李の協力もあり、当局の作戦や「緑の子」の存在の裏に大きな陰謀が隠されていることが次第に明らかになってくる。「緑の子」とは何者なのか、怪物の正体は、そして「山賊」たちはこの戦いに勝つことができるのか?
 前巻の設定を生かし、「山賊」の少年たちを主人公にすえ、単なる続編ではない独立したストーリーとして楽しむことのできる作品に仕上がっている。むろん、前巻で提示された謎にも関わっており、そのあたりのバランスの取り方はみごと。
 本作では遺伝子操作などにより新たな生命を作ることに対する問題提起がはっきりと打ち出されている。しかし、ただやみくもに反対するのではなく、そうやって生み出された生命に対して作者はそれらが生きる権利を持つことを擁護している。ある意味ではそれらは犠牲者でもあるのだ。
 様々な謎が現れ、物語が進行するにつれて解決され、さらに新たな謎が現れと、読者を飽きさせない。それだけ設定に奥行きがあり、そこで生きる人々もまたそれぞれの個性が生き生きと描き出されている。特に、少年たちの葛藤は本書での最大の読みどころかもしれない。自分たちがどのように生きていくかを、誰に教わるのでもなく自力で切り開いて行こうというその姿勢を余すところなく描き切っている。
 まだまだすべての謎は解決していないし、陰謀もその全体像を現してはいない。続巻以降の展開が非常に楽しみである。

(2004年3月30日読了)


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