「ここは魔法少年育成センター2〜どうしろと?〜」の続巻。
「イクセン」に新入生たちが入ってきた。そのうちの一人、庵野丈は、放火犯として補導されてきたということで、瑛蘭にも心を開かない。庵野の能力は空を飛ぶこと。一方、魔法使いに対する世間の風当たりはきつく、文部工夫省から審議官がやってきて、その調査次第では育成センターは廃止されてしまう。審議官の坂浦美代は最初から「イクセン」廃止を目的にやってきた人物。魔法のなんたるかも知らず、「イクセン」が張っていた結界を勝手に壊してしまう。結界のほころびを修復できるのは、隠遁生活を送る山井尚志先生だけ。瑛蘭と庵野は山井先生を呼びに行く大役を申し出るが、なんと庵野は飛ぶことができなくなっていた。「イクセン」存続の危機は回避することができるのか……。
孤独な少年、そして「不良」のレッテルを貼られたまま、それを消極的に肯定して生きていかなくてはならない現実。そうしないと居場所がない少年の心情。そういったものがごく自然に描き出されている。ただし、本書ではその少年の行動すべてを美化し過ぎであり、現実の飛行少年は周囲のレッテル貼りだけではなくかなりの部分で甘えの構造をもっていることも多少は匂わせておいてほしかったとは思うけれど。
何かを迫害、攻撃しようとするもののうちには、いくら公的な理論づけがされていたとしても、どこかに私憤や私怨があるものだという本書の指摘については、それをこうして戯画化し、わかりやすく提示したところを評価したい。ただし、本書の書き方だとご大層なことをいうものほど私情で動いているのだという一般化がされにくく思うが。
登場人物の名前は、一貫して判じ物になっている。本巻はそれがギャグとしても秀逸にできていたりするので、こんごもこの判じ物のネーミングは楽しみにしたいところだ。
(2004年5月2日読了)