読書感想文


ランブルフィッシュ8 決戦前夜秘湯編
三雲岳斗著
角川スニーカー文庫
2004年5月1日第1刷
定価619円

 「ランブルフィッシュ7 亡霊殲滅編(下)」の続刊。
 フェニックスとのSR決戦を前に、林崎要が試合不参加を表明する。一方、RFの秘密の一端を知った深見祭理は突如SR試合の指揮をとることを宣言し、実家の温泉宿に恵里谷のメンバーを連れていき特訓の合宿を強行する。祭理は要をSR試合に参加させるため、そして沙樹が自ら自分の弱点を知るようにし向けるために、周到な筋書きを用意する。それは、闘騎手でもない瞳子を実戦用のRFに乗せ、要と戦わせるという方法であった。設計士である瞳子ならではの戦法が最強の闘騎手である要に通用するのか。また、沙樹の母親とRFとの関係に関わる過去とは……。
 なかなか戦いは始まらないのである。未熟な者が強敵との戦いに勝つためには、それなりに根拠を与えなくてはならない。それを作者は1冊まるまる使って描くのである。一気に物語が進むことを望む読者にとってはまだるっこしい手続きかもしれないが、私はここらあたりにSF新人賞受賞作家の矜持を見るのである。また、学園小説としての構造を決して壊したくないという作者の意志を感じるのである。だからこそ、完結した時に現れてくる世界観に期待が持てるのである。

(2004年5月6日読了)


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