「妖説 源氏物語 壱」の続巻。
光源氏の子、薫は俗な世界に生きるのが嫌になり、出家を願っている。匂宮の博打仲間である藤原満輔が猿田大納言から「呪」と書かれた紙と黄金の蛇が入った箱を贈られたと相談してくる。彼らは陰陽師の白鴎とともに猿田大納言のもとに行く。猿田には象羅という異国出身らしい陰陽師がついているが、黄金の蛇の呪法は彼女がなしたものではなく、他の者が猿田にした呪を満輔に移したものだと判明する。高利貸しをして財をなしている猿田大納言に恨みを持つ者が、命を賭してかけた呪を白鴎はどう解くのか。
短編の連作のような、長い物語の一部分であるような、少し変わった構成の1冊。道具立てや時代背景は平安時代なのだが、登場人物のメンタリティが現代風であり、王朝時代独特のムードがかもし出されてこないのが気になる。
呪や怪異などは「今昔物語」のような味わいはあるのだが、ことこのシリーズに関しては、それらのエピソードから作者が読者に訴えかけたい「何か」が伝わってこないように思われる。光源氏の子どもたちの苦悩などが作者の中から発してきているように感じられないのだ。作者は、虐げられているものの苦しみや悲劇を描くのは得意だが、恵まれたものがそれゆえに苦しむという心情を描き出すことは苦手なのかもしれない。
どういったところをゴールにしようとしているのかが全く見えないというあたりに読んでいてなにか不安定な感覚が常につきまとう原因があるのかもしれない。
(2004年5月15日読了)