読書感想文


ばとる・おぶ・CHUCHU 告白の園
一条理希著
集英社スーパーダッシュ文庫
2004年6月30日第1刷
定価590円

 「ばとる・おぶ・CHUCHU 妖刀恋慕」に続く、シリーズ第3弾。
 洞窟に生き埋めになって出られないシャルロットたち。ミルフィーユは、自分が閉め出されたと勘違いして、シャルロットを裏切る決意をする。彼女は敵である聖白百合学園に入学しようとする。しかし、吸血っ娘は敵であるとする白百合の生徒たちはミルフィーユの言葉を信じようとせず監禁する。彼女の世話係に選ばれたのは年格好の近い胡桃であった。胡桃はミルフィーユが戦いにきたとは信じられず、友だちになろうとする。そして、ミルフィーユを信じてもらおうとするが、上級生たちには信じてもらえない。一方、正太郎があいと契らないのを見かねたのと自分の正太郎に対する気持ちに気づいた萌葱は、正太郎に愛を告白し、妻となることを宣言する。萌葱というライバルの出現で自分の正太郎への強い想いに気づいたあいは……。
 敵対する者同士に友情が芽生えるが、周囲はこれを理解できないという悲劇的な物語である。自分のことを大切にしてくれる人を求めるミルフィーユの心情や、友情が芽生えているのにそのことを訴えてもとりあってもらえない胡桃の悲しみ、そしてそのことが原因で気持ちにすれ違いが生じる2人の苦悩がよく描かれている。
 萌葱のプロポーズによって変わっていく人間関係など、本巻は全体に今後の巻の伏線という印象を受けた。長期シリーズ化が決定したということなのだろうけれど、もう少しストーリーを動かしてほしいものだ。内容的には短編集の2つのエピソードを一つにして長編に仕立てたという印象が残った。もう少し密度の濃いものが書ける力を作者は持っていると私は思うのだが。

(2004年6月29日読了)


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