読書感想文


攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 凍える機械
藤咲淳一著
徳間デュアル文庫
2004年7月31日第1刷
定価648円

 士郎正宗原作の人気アニメーションの脚本家が、アニメーションの設定をもとに執筆したオリジナル・ストーリーで「攻殻機動隊 虚夢回廊」に続く第2巻。
 公安9課の荒巻課長を暗殺しようとする狙撃手が現れたとの情報を受け、草薙素子たち9課のメンバーが課長を護衛する。登場した狙撃手が狙っていたものは……(「魔弾の射手」)。〈思考爆弾〉によるテロの犯人を逮捕するために、わざわざ小型思考戦車タチコマにウィルスを感染させた。ウィルスの影響が残っていないか確認するために交通課に貸し出されるタチコマ。そのタチコマは交通巡査の霧島奈々の事が気になって仕方がない。違法駐車の車両を調べていた霧島とタチコマは、脳殻の運び屋と遭遇するが……(「タチコマの恋」)。義体メーカー「トヨダケミカル」の専務が誘拐された。金品などの要求もないままに返されてきた専務だったが、タチコマが違法駐車車両で逃亡しようとした運び屋の手にその専務の脳殻があったと証言。脳殻を探し出して調査した結果、帰還した専務の頭の中には別人の脳殻が入っていることが発覚した。誘拐犯の目的は何か。そして本物の専務を狙って現れた最強の暗殺者とは……(「凍える機械」)。
 いずれもアニメ『攻殻機動隊2nd GIG』の設定を元に生み出されたオリジナルストーリーである。それぞれの短編が独立しながらも、密接な関係を持ち、最終話で大きな陰謀につながっていくという構成は、さすが実際にアニメで脚本を担当している作者らしく、アニメのシリーズ同様の効果をあげている。
 ネットの海でお互いがつながっているようで、実はそれぞれが孤独なのだというテーマが、小説版ではより強く打ち出されている。伏線の張り方も用意周到。映像とはまた違う小説ならではの面白さを十分発揮しているといえる。
 ただ、例えばタチコマの活躍する場面などはやっぱり動きや音声つきでないと物足りないし、そういう意味での不満は残る。できれば、第1巻とともにオリジナルビデオにでもしてくれないかとさえ思ってしまう。むろん、それだけ本書がアニメの魅力を十二分に再現しているからそう感じてしまうのだろう。

(2004年7月20日読了)


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