「唯一の神の御名」に続くシリーズ第4弾。
カトリック教会の総本山ヴァティカンでは、龍緋比古を倒すために、イエスの血を受けた聖杯を修道士セバスティアーノに託し日本に派遣する。セバスティアーノは東京の神楽坂にひそむ古代エジプトの邪王ス・ネフェルと接触し、邪神の力を用いて緋比古を滅ぼそうと考えたのである。しかし、ス・ネフェルはヴァティカンが考えていた以上の力を有していた。ス・ネフェルを守る4体の邪神によって毒を注入されてしまった緋比古。ス・ネフェルにより囚われの身となる透子。イエスの血を受けた最強の吸血鬼に最大の危機が迫る。
緋比古という存在は、確かにカトリックから見たらあってはならない存在なのであろう。作者がヴァティカン対緋比古という図式を考えたのは当然だと思われる。本書の面白さは、そこに復活した古代エジプトの王という要素を加えたところにある。つまり、2本分の長編の書けるアイデアを1冊にしたといっていい。しかも、緋比古たちは常に危機に瀕した状態で物語は進んでいく。このあたりの展開は、読者を釘付けにして離さないものがある。
さらに透子の体にひそむ東日流の姫神も加わることにより、シリーズならではの広がりを持たせた上で、宇宙創世の秘密にも踏み込むスケールの大きな内容になっている。シリーズが進むにつれ、世界が奥深くなっていくのが嬉しいところだ。
息をつがせぬ展開と、そのテーマの深さにおいて、本シリーズはますます目の離せないものになってきた。本書だけ読んでも面白いけれど、未読の方は第1巻から読むことをお薦めする。今後の展開がますます楽しみになってきた。
(2004年7月25日読了)