「一休破軍行」につづくシリーズ第5巻。
朝廷から秘宝が盗まれた。イザナギ、イザナミが日本列島を作ったとされる天の瓊矛である。一休は父である後小松上皇の依頼を受け、天の瓊矛を盗んだとされる赤松満祐を追って駿河へと向かう。虚舟から現れた娘、愛染、満祐の配下の細人である華璃帝尼、朝廷の勅忍である火車とともに目指すは熱海。そこには開場に突如隆起してきた真仏島があり、天の瓊矛はその島に運ばれているのだ。天の瓊矛の力をものにしようとする謎の神官、吉田憲法や自ら魔仏と化して世界を支配しようとする六代将軍足利義教、そして義教の配下で残忍な心を持つ赤松貞村らが一休の行動を阻止せんと迫る。憲法の配下にある三人の鬼たちの奇怪な幻術に悩まされる一休たち。一休は天の瓊矛を朝廷の手に取り戻すことができるのか。魔仏たらんとする義教の野望を止めることができるのか……。
一休が魔仏と戦う理由が、自分に声をかけたために無惨にも殺された名もない女の供養にあるというところに、本書で作者が求めているテーマが現れている。仏の教えを実践する濁りなき心の持ち主である一休という主人公の行動原理がこれまで以上に強調されているのである。
天の瓊矛に仕える愛染の無垢ながら時には残酷で気まぐれな行動は、神というものの本質を描き出し、中世に流行したという魔仏伝説を自在に料理して秘術を尽くした戦いを繰り広げるアクションシーンはまさに絶品。ただ、難をいえば、真言立川流をオールマイティーの魔術として常に登場させているのは、いくら物語の便法とはいえ、頼り過ぎではないかと感じたりもした。気にし過ぎかもしれないが。
今後は一休と義教の戦いがこのシリーズの軸となっていきそうである。本書の戦いはその前哨戦という位置付けになるのだろうか。それでこの激しさである。史実通り義教が暗殺されるまで、どのような激しい戦いが待っているのか。ますます楽しみになってきた。
(2004年8月5日読了)