「沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ一」の続巻。
空海は、劉家に現れた妖物が歌った詩が楊貴妃の美しさについて李白が書いたものだと白楽天に教えられる。そこで逸勢と白楽天とともに楊貴妃の墓を調べに行くが、なんと棺は空であった。一方、徐家の綿畑を掘ってみると、始皇帝が遺した兵馬俑が見つかる。さらに兵士の俑が出現し戦いとなるが、俑にかけられた呪を解きなんとかおさめる。皇帝に仕える文人の柳宗元から、空海は大切なものがなくなったことを知らされる。それは、玄宗皇帝に仕えた安倍仲麻呂が李白に書き残したという日本語で書かれた手紙であった。楊貴妃と仲麻呂の間に何があったのか。皇帝に呪をかける奇怪な胡人のねらいは……。
物語は一気に核心に迫っていく。ここでのクライマックスは、仲麻呂が遺した手紙である。むろんこの手紙は作者の創作なわけであるが、楊貴妃が日本に逃げ延びたという伝説をもとに、作者はあり得たかもしれない歴史の謎に果敢に挑戦するのである。虚実のせめぎあうこのくだりこそ、伝奇小説の醍醐味といえるだろう。むろん、謎はさらに深まるばかり。読み手を一気に小説世界に運び込む力に感服するのみである。
(2004年8月9日読了)