「呪海」に続くシリーズ第2巻。
岩手の苫丑遺跡から新発見の縄文土器が出土した。この土器は壺の形をしておらず、独鈷型で内部は空洞になっていた。担当者の田神のもとに、聖天神社の聖天弓弦が発掘アルバイトをしたいとやってくる。弓弦は、苫丑に発生した「穢レ」の気を感じてそれを探りに来たのだ。一方、遺跡が現れた土地の持ち主である羽田野は、この独鈷型土器を勝手に持ち帰る。すると、羽田野のまわりで次々と怪異が起こり、空洞のはずの土器に何か液体がたまり始める。羽田野は土器を壊すが、土器の中から黒い霞が現れ、彼の体内に吸い込まれていった。なんと彼はその霞の力で若返ったのである。残る土器も全て自分の物にしようとたくらむ羽田野。ところが、遺跡からは新たに想像もつかなかった物が出土し……。
今回は、縄文時代の呪具にまつわる物語である。着想は面白く、土器に続く出土品も読者の想像を上回るもので、このあたりのアイデアのユニークさはみごとというべきだろう。ただ、呪具のメカニズムなどは明らかにされぬままに、弓弦と古代人の怨念が作り出した怪物の戦いを中心とした展開になっていくあたり、アイデアが未消化なままで終ってしまったような印象を受けた。
また、シリーズを意識して、弓弦のライバルである法印空木も事件にからんではくるのだが、土器の謎をめぐってからむわけでないので、何か無理をして出してきたような感じがした。長期シリーズにするのであれば、ストーリーにからみようがないところでの出し方にもう少し工夫が欲しいところである。
アイデアはよいのだが、ストーリーの弱さがそのアイデアを生かし切れなかったというところだろうか。たぶん、縄文時代に対する具体的なイメージが形になってこないところにその原因があるのではないかと思う。そういう意味ではもったいない作品といえる。
ところで、京都出身の私にとって違和感を覚えさせたのは法印空木が事務所を構える場所の描写である。「出町柳」にオフィスビルは作りにくかろう。ここは「出町」だけで十分だと思う。実際、事務所から御所が見えるという描写があるから、場所的には出町商店街あたりか。しかし、ここは美観の関係で「オフィスビル」などというものは建て辛いのである。作者なりに取材はしているのかもしれないけれど、こういう細かいところでその場所を知っているものに違和感を覚えさせてはいかんだろうと思う。細かいようだが、具体的に地名を出すということの難しさを感じた次第。
(2004年8月12日読了)