読書感想文


ランブルフィッシュ あんぷらぐど
三雲岳斗著
角川スニーカー文庫
2004年8月1日第1刷
定価590円

 「ランブルフィッシュ8 決戦前夜秘湯編」に続くシリーズ第9弾。今回は番外編の短編集である。
 沙樹が恵里谷に編入してくる試験会場の騒動、合宿所での肝試し中に起こる騒動、寮の中での恋愛に関する騒動、恵里谷を見学にきた小国の王女が巻き起こす騒動、瞳子の従妹で沙樹の元彼女である新進ヴァイオリニストが寮に現れて起こす騒動、休日を寂しく過ごす瞳子を待ち受ける騒動(?)。ストーリーの本筋では書けない学園生活の様子を活写した短編が6編収録されている。
 いかにも主人公たちが起こしそうな騒動を手際よく書いていて、シリーズの熱狂的なファンなら喜ぶだろう。しかし、私が作者に期待しているのはこのように読者の期待に応えて器用にまとめられた短編ではなく、かっちりと計算された上で描き出される本格的な物語なので、まあ、ファンサービスにはちょうどいいんじゃないかと思うばかりである。
 どの短編も途中でだいたい結末が予想できてしまう。ファンサービスなんだからそれでいいのかもしれないが、作者の力量ならばもっともっと凝ったものに仕上げることもできたはず。読者層を考えればこの程度でいいのかもしれないが、そういう力の抜き方に不満を感じるのは私だけだろうか。 

(2004年9月3日読了)


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