読書感想文


ローマ人の物語9
ユリウス・カエサル ルビコン以前[中]
塩野七生著
新潮文庫
2004年9月1日第1刷
定価476円

 「ユリウス・カエサル ルビコン以前[上]」の続巻。
 いよいよカエサルが歴史の表舞台に登場する。ポンペイウス、グラッスス、そしてカエサルによる三頭政治の開始である。ここでもカエサルは民衆の英雄であるポンペイウスを表に出し、自分の借金の債権者であるグラッススを加えて、自分は3番目のポジションに立つ。そして執政官に立候補して当選し、実権を握るのである。ここで彼が行ったことは、元老院支配の弱体化であった。キケロなどはカエサルが在職中にはその弁舌の冴えを持ってしても対抗できなくなる。執政官の任期が切れると、彼は規則通り属州の総督となる。たいていの総督が富裕な土地を望みそこで財をなしたのに対し、カエサルは多くのゲルマン人やガリア人たちが服属していないガリア州(現在の西ヨーロッパ域)の総督に着任する。そして、着任してすぐに兵を出し、ガリア人たちをローマの支配下に置くべく戦役を始めるのである。本書ではガリア戦役前半にあたる5年分が叙述される。ブリタニア遠征まで果たしながら、ガリア人たちの裏切りと逆襲にあい、緊迫した状況が続く。
 カエサルは、ガリア人たちと戦うだけでなく、自分が留守にしている間のローマの政治情勢にも対応しなけれはならなかった。また、戦役がローマに与える影響も計算しなければならなかった。それをやってのけるのであるから、スケールの大きさは計り知れない。
 ただし、ガリア戦役のくだりを読んでいても、さほど興奮もしなければカエサルの軍事の才に感嘆するということもないのは事実である。というのも、同時期の中国の権謀術数や戦略戦術の方が、そのスケールや緻密さにおいて上であると思われるし、登場する人物の多彩さにおいてもこの比ではないからである。
 だからといってカエサルの偉大さを貶めようというのではない。時代や風土、歴史状況によって人物の評価も変わる。共和制ローマにおいてカエサルに対抗できるほどの人物が存在しなかったという事実にかわりはないのだから。
 ガリア戦役をカエサルがどうおさめてローマに帰還していくのか、次巻も楽しみである。

(2004年9月5日読了)


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