「ユリウス・カエサル ルビコン以前[中]」の続巻。
ガリア人服属の一歩手前で、カエサルのもとに強敵が現れた。オーヴェルニュ族のヴェルチンジェトリックスである。彼は一度はローマの軍門に下った諸部族を集結させ、カエサルの弱点をついた作戦をたてる。カエサルはこの強敵の前に苦杯をなめる。しかし、アレシアの戦いでとうとうヴェルチンジェトリックスを下し、ガリア地方を制する。さて、三頭政治の一人クラッススがパルティア戦役で戦死すると、元老院派はポンペイウスとカエサルの間を裂くという策にでる。カエサルは自派の護民官であるクリオとアントニウスの協力でなんとか勢力は保つものの、元老院最終勧告による排除が決定してしまう。過去、この勧告により、どんな英雄も元老院の前に膝を屈してしまっていたのである。カエサルはルビコン川を前にして、ポンペイウスと戦い元老院を打破するためにローマに突入するかどうか迷う。そして、ついに「賽は投げられた」。カエサル50歳、乾坤一擲の勝負に出たのである。
本巻ではガリア戦役の最終年に現れた強敵との戦いが主に描かれている。これまでのカエサルの本当の強敵は外部にはおらず、元老院という味方のはずの人々であった。戦場の指揮官としての有能さを初めてここで発揮したといえるだろう。しかし、ここでも彼は外敵と同時に内部の敵とも戦わなければならなかった。
勝負を賭ける時期は、一時にくる。その時、全てを勝負に投入できるかどうかが人の運命の分かれ道だといえるだろう。カエサルは、ヴェルチンジェトリックスとの戦いに次いで、休む間もなく勝負に全てを賭けることになる。まさにカエサル時代のクライマックスといえるだろう。だからこそ、著者も多くの枚数を裂いてこの時代を活写しているのである。
次巻からはカエサルの栄光の完成期が描かれる。勝負に全てを賭ける男の魅力を著者がどのように描き出しているのかが楽しみである。
(2004年9月7日読了)