読書感想文


ローマ人の物語13
ユリウス・カエサル ルビコン以後[下]
塩野七生著
新潮文庫
2004年10月1日第1刷
定価438円

 「ユリウス・カエサル ルビコン以後[中]」の続巻。
 紀元前44年3月15日、カエサル暗殺さる。
 首謀者はマルクス・ブルータス。そして、彼を陰から動かしたのがカシウス。だから、あの有名な最期の言葉「ブルータスおまえもか」はこのマルクス・ブルータスに対して発せられた言葉とされている。しかし、著者はその説をとらない。実行犯の14人の中にいたもう一人のブルータス、デキムス・ブルータスを見て、カエサルはそのように叫んだのだろう、と。なぜなら、カエサルの遺書には自分の死後、後継者の一人としてデキムス・ブルータスをあげていたからなのだ。カエサルは死んだ。そして、その後継者に指名されたのは、わずか18歳というオクタヴィアヌスであった。カエサルの片腕と自認していたアントニウスは、オクタヴィアヌスがローマに帰ってくるのを妨害したりするが、結局はカエサルの後継者として認めざるを得なくなり、第二次三頭政治が開始される。しかし、アントニウスはエジプトの女王クレオパトラの色香に迷い、クレオパトラのための戦いを始める。かくしてオクタヴィアヌスとアントニウスによる最期の戦いが始まるのである。
 ここでは、シェークスピアの戯曲などで知られる俗説に対して、キケロらの手になる第一次資料をもとに、カエサル暗殺の真相を描き出す。さらに、カエサルの後継者が完全に決まるまでを克明に綴る。
 著者にとっては、カエサルの後継者が決まるまでは、カエサルが完全に死んだとは言い切れないということになるのだろう。アントニウスやオクタヴィアヌスは、カエサルの考えていた政体を完結させるために存在したといわんばかりである。つまり、それだけカエサルの存在は大きく、重いものだということになるのである。

(2004年10月16日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る