「スター・ダックス」の続編。
犯罪と防犯方法を輸出するというヴィトゲンシュタイン王国にスカウトされた詐欺師のショウは、色仕掛けで男を落とすヴァイ、スリの名人テイラー・サム、暴力と運転技術が売り物のザカール、天才ハッカーのゾークと「ドリーム・チーム」を組み、国王の命令でリストビア帝国にスパイとして侵入する。彼の役回りは近衛師団のハレム中尉に変装し、兵站について探るというもの。食品コングロマリットのハードメタル社が、戦争間近のリストビアに兵站を売り込んでも、参入する余地がない。その謎を明かしてほしいというのがハードメタル社のブルコギ会長の依頼である。ところが、変装してリストビアに入り込もうとしたショウの目の前で、かれと全く同じ姿の「ハレム中尉」が先に入国するではないか。本物のハレム中尉はハードメタル社が美女と豪華な食事で囲い込んでいるというのに……。詐欺師によるスパイ活動は成功するのか。そしてハレム一族がリストビアでたくらむ陰謀とは……。
コン・ゲームSFがシリーズ化されて帰ってきた。詐欺師によるスパイ活動という仕掛けがおもしろい。しかも、二重三重に罠が張り巡らされておりその仕掛けを突破する楽しみもある。
また、本書は主人公の成長物語でもあったりする。詐欺師として一流である彼が、「ドリーム・チーム」のリーダーとして百戦錬磨の仲間たちから認められていく過程が書き込まれ、物語をふくらませている。
手練れの作者だけに、おもしろさは保証できる。安心してこのコン・ゲームを楽しむことができるのである。ただ、本書に関していえば、SF味は薄く、せっかくの宇宙規模の詐欺という設定が生かされているとは言い切れない。そういう意味では前作のよりも完成度は高いものの、幾分物足りなさを感じてしまった。次作では、SFならではというアイデアのコン・ゲームを期待したい。
(2004年10月20日読了)