「人生は五十一から」に続く週刊誌連載エッセイ集第2巻。本巻には1999年の分が収録されている。
この年、著者が再々訴えかけているのは「サマータイム制導入反対」である。戦後すぐに導入されて結局数年で廃止されたこの制度を経験している著者だからこそ、そういう制度に反対であるという理由に説得力がある。ただ、私はこの年に「サマータイム制」の導入が強く推進されていたという記憶がないのですね。ここらあたりは関心の持ちようの違いかもしれない。それよりも「住民基本台帳法」や「国旗・国歌法」の制定の方が印象に残っている。著者はこれについては「国歌は『さくらさくら』でよいのではないか」ということを理詰めに主張している。そして、そんなことを決めるよりもオウム真理教の残党をなんとかしろと主張するのも関心の持ちようの違いがあっておもしろい。私にとっては「地下鉄サリン事件」はあまり身近な脅威とは感じられなかったから、なぜそこまで著者がオウム真理教団にこだわるのかが理解しにくかったりする。たぶん著者は大震災については実感として脅威は感じないのではないだろうか。
そんなことを考えながら読んでいくと、著者の主張の確かさや蘊蓄を楽しむだけではない興味関心がわいてくる。東西の差というのだろうか。いろいろな楽しみ方のできる一冊である。
本巻の白眉は翻訳家の稲葉明雄さんを悼む回だろう。これだけ心にしみいる追悼文はなかなか書けないものである。
(2004年10月31日読了)