「最良の日、最悪の日」に続く週刊誌連載エッセイ集第3巻。本巻には2000年の分が収録されている。
20世紀最後の年である。そして、著者はこのエッセイ集で20世紀がそれほどよい時代だったと思えないということを書いている。実は4年後の現在、もうすでに20世紀を「古きよき時代」と定義づけて回顧しているという動きがあったりするのだが、20世紀(特に高度経済成長期)を大人として過ごした著者の実感とはいかにかけ離れていることか。20世紀を「古きよき時代」と定義づけている世代は、私たちを含む40代の人間であったりする(特に串間努)。要は、自分が子どもであった時代を懐かしむということであるに過ぎないことが、本書を読めばわかるのである。そういうものなのである。
本書は同時代クロニクルという側面を持っていて、ここでは世相の悪さをたびたび嘆いている。ところが、世の中はさらに悪化していくので、文庫版あとがきには「まだ2000年は〈ハッピー・デイズ〉だったのだ」と書かれている。そうですね。オレオレ詐欺もなければブッシュJr.も出てきていないのですね。現代の4年はなんとめまぐるしいことか。
そして、目まぐるしくなかった時代の様子を書き残そうとする著者のスタンスは、いつでも変わりがない。だから、著者の小言は耳に快い。山本夏彦亡き後、著者と山藤章二がいなくなったら私たちは誰に小言を言ってもらえるのだろうか。それが小林よしのりや井沢元彦だと、凄く嫌だ。
ほんとに、いろんなことをとりとめもなく考えさせてくれるエッセイ集ですね。こういう本を読めるだけ、まだ今はましなのだと思わずにはいられない。
(2004年11月3日読了)