読書感想文


乱華八犬伝 地の巻
鳴海丈著
トクマノベルス新伝奇
2004年l2月31日第1刷
定価819円

 「乱華八犬伝 天の巻」に続く完結編。
 伏姫の残した八つの珠は、八犬女の胎内にあり、出雲京四郎がその処女を散らした時に世に出る。残る三つの珠を求めるさなか、奉魔衆の一人の吐いた毒液のために、八犬女が近づくと光る数珠は濁らされ光を失ってしまう。京四郎は数珠の力を借りずに八犬女を探し求めることができるのか。また、里見家の財宝を狙うのは奉魔衆だけではなく、尾張徳川家、さらには正体不明の敵も加わる。尾張柳生の総帥、柳生六郎兵衛の剣の前にあえなく敗れ去る京四郎。彼の命を助けた意外な人物とは。そして宝珠が全て揃った時に起こった不思議な現象とは……。
 エロティックな部分は読者サービスとしても、伝奇の部分さえしっかりしていればよいと思う。ところが、奉魔衆という集団の正体は最後まで不明であるし、尾張柳生が登場するのも唐突な印象を受ける。作者の一番書きたかったのは、どの部分だったのだろうか。敵の魅力か、主人公と剣豪の対決か、女性とのからみか。そこが見えてこないので、八犬伝の設定を利用して時代ポルノ小説を書いたというところにとどまってしまっているように感じた。せっかく魅力的な設定をつくったというのに、もったいないことである。通俗的なのが悪いというのではない。どこか徹底して表現したいものが見えてこないのが残念なのである。
 特別編として付された書下ろし短編は、次のシリーズのプロローグ的な役割を果たすものと解説にあるが、本の構成としてこのシリーズに直接関わるものであるべきではないだろうかと思うのだが。

(2005年1月7日読了)


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