「ここは魔法少年育成センター」の姉妹編が登場した。
ここはもう一つの地球。こには地球から切り離して魔法少女を育成する「聖少女騎士学園」がある。彼女たちは〈魔女〉ではない。〈天使〉なのだ。全寮制の学校で暮らすリカは、地球の魔法少年ナルのホームページで紹介されていたお茶を飲みたくて仕方がない。しかし、通販をしているわけでもないので、直接会って飲ませてもらうしかない。しかし、彼女たちは自由に地球にいけるわけではないのだ。寮の先輩であるレオに相談したリカ。レオも実は地球の「魔法少年育成センター」に行きたい理由があるのだ。そこで遠足の行き先に「イクセン」を選ぶという計画を立てたのだが、園長の許可はおりない。レオは一計を案じる。それはサッカーのチームを作って、「イクセン」のサッカー部と対戦するというものだった。リカのほかにも、転入生のクレオとパトラ、ゴスペル部の3人、リカのルームメイト3人、そして成績優秀ながら他との接触を拒否するマホがメンバーとなる。園長は教師チームと対戦して勝ったらたいがい試合を認めると約束した。ところが、問題がひとつあった。それは、リカが球技をする時には、一切ボールに触れることができないということであった。チーム〈放課後のファンタジスタ〉は猛練習を始めるが……。
姉妹編である「イクセン」シリーズは、マイノリティの影や苦痛も描かれていてひとつの問題提起をしていたといえるが、本書の場合は舞台を「もう一つの地球」という普通の人間から隔離された空間に設定しているせいか、そのような重さはなく、純粋に少女小説の楽しさである人間関係で読ませている。そして、スポーツものらしくチームワークの大切さなどがテーマとなって、ストレートに集団の中の個人の役割とは何かという思春期に抱える課題に対して作者のメッセージがこめられている。
ひねりが少ない分、読後に残るのはさわやかな気分だけである。少しばかり説教臭いのだけれど、正統派の青春小説らしいということはいえるだろう。タイトルは古いテレビ番組をもじったものだと思われるが、各章の章題も古いスポーツドラマやスポーツ漫画のタイトルをもじっており、また、歌舞伎役者の名前をもじった人物名も登場したりする。そこらあたりに作者の遊び心が感じられて楽しい。
ただ、商品名が固有名詞でひんぱんに登場するのはいただけない。特に、物語の鍵となるものにはっきりと商品名を書いているのはどうかと思った。むろん、それはそれで効果は上がっているのだが、製品のイメージを利用するというのは小説の手法としてはいささか安易なのではないだろうかという疑問が残ったのも事実である。
(2005年2月11日読了)