読書感想文


炎立つ 参 空への炎
高橋克彦著
講談社文庫
1995年9月15日第1刷
定価641円

 「炎立つ 弐 燃える北天」の続巻。
 陸奥守の任期が終ろうとしている源頼義。朝廷からは、安倍氏との和議を実行するために新任の陸奥守が派遣されていた。頼義は、出羽の豪族清原氏を味方につけ、安倍氏との戦を実行する。今回こそは安倍氏の当主、貞任の首を取らないわけにはいかない。いや、そこまでしなくとも、はっきりと戦果をあげなければ本当に安倍氏との和議が成立してしまう。頼義の嫡男、義家は、安倍氏の家庭不和を察知し、頼時の妻である瑞乃と貞任の妻の流麗、そして流麗の父である金為行に接近し、源氏に内通するように工作する。新しい陸奥守を都に追い返した頼義と、要衝の衣川を捨ててまでして戦う決意をした貞任の最後の戦いが始まった。
 優位に立っていたはずの者が、蟻の一穴からもろくも崩れていってしまう。本書では「前九年の役」の決着までが描かれ、源氏と清原氏の手で安倍氏がほろびる様を描く。頼義に勝ち過ぎたためにできてしまった隙が蟻の一穴となるのである。
 かくして、「前九年の役」幕を閉じる。しかし、物語はまだ終ってはいない。陸奥の民の期待を受けて産まれた子どもがどのように成長していくか。いよいよ物語は新しい舞台に移るのである。

(2005年2月17日読了)


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