「桂米朝集成【第三巻】上方文化」の続巻。本巻で全巻が完結した。
著者には2人の師匠がいる。研究家としての師匠は正岡容、落語家としての師匠は桂米團治。さらに、師匠が没した後は、橘ノ円都などの古老から多くのものを吸収していった。小松左京、高田好胤ら作家や僧侶などとも交遊が深い。そして、桂枝雀、桂ざこばら個性豊かな弟子にも恵まれている。ただし、枝雀、歌之助など、早世した弟子もおり、自分より先に弟子に逝かれる辛さも味わっている。
本巻ではそういった交友関係に関わる文章が多数収められている。
特に、巻頭の座談会でかつて著者が所属していた「千土地興行」という芸能プロの成立から解消までの経緯や当時の状況が記録として残されているのは価値が高い。弟子たちの襲名披露口上など、こういった企画でなければ一つにまとめられることのないものが多く収録されているのも嬉しいことである。
また、巻末には詳細な年譜が付されており、上方落語の歴史をたどる貴重な記録となっている。
全4巻にわたるこのシリーズを企画、編集した2人の編者の力がなければこれらの貴重な記録は残らなかっただろう。米朝という偉大な存在の残したものも、それをサポートする人物がいなければ形にはならない。これだけの記録をまとめあげた編者にも敬意を表したい。
(2005年4月9日読了)