読書感想文


人生は五十一から 4
物情騒然。
小林信彦著
文春文庫
2005年4月10日第1刷
定価619円

 「出会いがしらのハッピー・デイズ」に続く週刊誌連載エッセイ集第4巻。本巻には2001年の分が収録されている。
 この年はあの「9・11同時多発テロ」と「アフガン空爆」のあった年であり、小泉旋風が吹き荒れた年であり、古今亭志ん朝が亡くなった年である。特に著者にとっては志ん朝の死はずいぶんと堪えたらしい。それが、生きた「江戸前」の文化の死とつながるからなのだと著者は実感しているのである。
 宮崎駿の「千と千尋の神隠し」について述べた文で、こういう一節があった。
「ぼくはアニメーションやドキュメンタリーにはくわしくない。だから、これを書くのは、アニメに関しての素人の感想である。アニメおたくは(あらゆるおたくがそうであるように)部外者の発言にはすぐ石を投げるので、ひとことお断りしておく。ただし、ディズニーやフライシャーの短篇漫画を戦前から観ていたことをつけ加えておこう」。
 自分の知識をあからさまに誇ることはしないけれど、さりげなくちらつかせて有無を言えなくしてしまう。ここらあたりは著者が江戸文化を受け継いでいることを示しているように思う。こういう「芸」ができる作家はそうそういない。そして、著者のこういったスタンスが、私は本当に好きなのである。

(2005年4月29日読了)


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