読書感想文


ランブルフィッシュ 大会開幕奇襲編
三雲岳斗著
角川スニーカー文庫
2005年4月1日第1刷
定価552円

 「ランブルフィッシュ あんぷらぐど」に続くシリーズ第10弾。
 激しい合宿を終え、いよいよサバイブ戦が開幕する。ところが、瞳子は高雄舞夜と美夜の姉妹に連れられ、否応もなくメイクアップをほどこされるし、沙樹は深見祭理によってトイレに監禁され手錠で水道管につながれて出られないようにされてしまう。そして開幕した時にガンヒルダに騎乗していたのは沙樹ではなくなんと祭理で、本来祭理が座るべき管制塔の指揮者席に座らされたのは瞳子……。全ては祭理のたくらみであり、サバイブ戦に勝利するための極秘の作戦であったのだ。果たして恵里谷チームは強敵フェニックスチームに勝つことができるのか。戦いのゴングは今鳴らされた。
 祭理の策謀で瞳子や沙樹が本来いるべき席にいけなくなるあたりの展開はスリリングかつユーモラスである。また、先頭が始まった後の作戦の描写も、きめ細かくなされていて、それでいてスピード感もある。
 国家レベルの陰謀が明らかになるにつれて登場人物が次々と増えていき、それらの人物の描き分けもしっかりしているのはいいのだが、それだけに巻頭の登場人物一覧も端役にいたるまで書くなどの配慮がほしいところではある。なぜならば、1シーン、1カットしか登場しない人物であっても、かなり重要な役割を果たしているからである。そういう贅沢な登場のさせ方ができる作者の力量に、読者がどれだけついていけるのか。私の頭脳は老化し始めているので、現在の刊行ペースだととても全ての人物の相関関係を記憶していられないのである。
 今後はもっとからまったややこしい人間関係が明らかになっていくと思われる。それを読者にどう提示していくのか。作者の力量ならば何ほどのこともないと思うのだが。

(2005年5月4日読了)


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