読書感想文


クラッシャージョウ10
ダイロンの聖少女
高千穂遥著
朝日ソノラマ文庫
2005年5月31日第1刷
定価571円

 「ワームウッドの幻獣」に続くシリーズ第10作。
 ジョウたちのチームが受けた依頼は、現地に着かないとその全貌がわからないという異様なものだった。クーデターによってゴーフリー帝国の皇帝位についた独裁者ルキアノスは、強力なサイボーグを次々に戦わせ、勝ち残った戦士ザックスを城塞都市ダイロンに差し向ける。ダイロンには聖なる力を持つ少女ネネトがおり、その力によって独裁者から身を守っていたのだ。しかし、ルキアノス帝はネネトの力を科学的に解析して自分たちのものにしようと狙っているのだ。前回の攻防戦で負傷したネネトを助けるには、一時的にダイロンから離れ、医者の治療を受ける必要があった。ジョウたちの役目は、ネネトを護衛して無事にダイロンから脱出させること。しかし、刺客ザックスの巧妙な罠によって、ジョウたちはサイボーグたちが戦わされる闘技場に誘い込まれてしまった。最強の戦士ザックスを前に、ジョウたちはどう戦うのか。そして、ルキアノス帝の野望を断ち切ることができるのか。
 シリーズ再開後の第2作である。驚くべきことに、再開前のシリーズとテイストは変わっていない。ここらあたりが作者の技量の高さということなのだろう。特に闘技場に入ってからの死闘のシーンは手に汗握る展開で、一気に読まされてしまった。
 なぜ再開前とのテイストを変えることなくわざわざ続編を書き続けることにしたのか。本巻を読んでいると、現在妙にたて続けに発行される「ライトノベル読本」に対して、作者が新作を発表することで自己主張しているのではないかという気がしてきた。
 それは自分の存在をアピールするというのではなく、「ライトノベル」の原点をジャンル最初の作家である作者がみずから示すことにより、今さら騒ぎたてる者に対して教え諭しているということではないのか。
 娯楽小説としての面白さとはなにか、そして、小説というものとはかくあるべしという主張が、この復活シリーズには込められているような気がしてならない。

(2005年6月19日読了)


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