「ぺとぺとさん」の続編。
シンゴたちの住む鮎川町は、異様に妹率が高いので、「女未(にょみ)の里」と名付け特に可愛らしい妹たちを「ミにょコン」というコンテストで選び、物産展のコンパニオンなどをさせている。ぺと子とちょちょ丸をはじめとする「妹」たちは、東京銀座逆縞屋デパートで開催される「しすたあ・パラダイス にょみの里フェア 鮎川町物産展」のコンパニオンとして大活躍。物産展が終ったあとは、シンゴたちの通う中学校の校庭で行われる「いもうと天国」というイベントでも「1日妹」として客を喜ばせる。そんななかで、博多に帰るちょちょ丸は、ぺと子と専属契約を結ぶことを提案してくる。彼女のプロジェクトでは、ぺと子はアイドルとしても活動することになるのだ。しかし、「いもてん」が終ったら、ぺと子はちょちょ丸といっしょに博多に行ってしまわなければならない。自分が去ったあとのシンゴのことが気になるぺと子は一計を案じ……。
小説におけるリアリティというものを考えさせられた。例えば、銀座にある一流百貨店が、いくら名物とはいえ一つの町だけをクローズアップして「町おこし」の物産展をするだろうか。また、そういうイベントのコンパニオンに、中学生や小学生を起用するだろうか。「妹萌え」でない者も「いもうと天国」などというイベントを楽しめるだろうか。
小説とは、嘘をいかに「ありそうなこと」と感じさせるか、あるいは嘘とわかりながらその嘘に迫真のあるリアルさをいかに演出していくかが勝負であると思う。本書は、いくら読者対象が若いからといっても、嘘ならではの楽しさを読み手に満喫させるだけのリアリティに欠けているように思うのである。ましてや、誰かの妹でもないぺと子を母親を姉と偽ってコンパニオンにしてみたり、その母親までが小中学生のコンパニオンに混じってしまうなどという、小説内の世界のルールまで逸脱してしまっているとしたら……。
さらに、本書の一番のテーマであるはずの、少年の淡い恋心は、「にょみの里フェア」や「いもてん」などのイベントに隠れてしまい、きっちりと描かれていない。にもかかわらず、作者は物語のクライマックスに少年と少女の恋物語を持ってくるのである。
1話完結の短篇オムニバスという形式にして、それらが最終的に有機的につながるという形であれば、もう少しこれらの雑多なエピソードをうまくまとめられたかと思うのである。そういったあたり、編集者がもっと効果的なアドバイスをできたのではないかとも思われる。
手厳しい書き方になってしまったけれど、この作者には独特のムードを作る力があると思うし、それを生かすも殺すもストーリー次第だと思うのだ。だからこそ、小説に不可欠なリアリティ構築や、がっしりとしたストーリー構成の技術を身につけてほしいと感じるのである。この物語に投入されたいくつかの優れたアイデアを生かし切れていないのは、本当にもったいないことだなあと思うのだ。
(2005年7月27日読了)