「桂枝雀爆笑コレクション2 ふしぎななあ」に続く第3巻。本巻には「宿替え」「青菜」「高津の富」「池田の猪買い」「崇徳院」「饅頭こわい」「鷺とり」「子ほめ」「蔵丁稚」「住吉駕籠」「八五郎坊主」「義眼」を収録している。
本巻はサブタイトルの「けったいなやっちゃ」に象徴される、不思議な人々が主体となった落語がおさめられている……というか、枝雀落語に登場する人物はたいていがけったいなやっちゃないかと思うんレすけロねぇ。嘘じゃありゃせん、ほんまじゃで。
枝雀落語のマクラには「みなさんはアハ、アハと笑っていただいたらそれでいいのでございます」という言葉がよく出てくるが、特に本巻にはそれが多い。「子ほめ」のマクラに「『人間の業を追求しているのじゃ』なんて、そんなバカなことは、私、いたしません」とあって、どきりとした。これは立川談志に対するストレートな批判ではないか。談志はその著書で確か「枝雀と論議をしようとしてもあいつは逃げた。あいつには語るべき理論がないのだ」というような意味のことを書いていたはずだが、これは、枝雀は談志の落語論にはくみしないから談志から話しかけても答えなかったのではないだろうか。解説は、これまた談志とは方向性の違う柳家小三治。枝雀とは何もいわないでもお互いにわかりあえていたというようなことを書いている。ううむ、なるほど。そういうことか。わからない人は3者の落語をCDでいいから聞き比べていただきたい。
それにしても、シュールな味わいの中に自然に溶け込むように入っている「情」の温かみが胸にしみる。理屈をつきぬけて、落語そのものと同化してしまっていた枝雀の行き着こうとしていたところは何だったのかが、その「情」の部分にあるように思えてならない。
(2006年2月22日読了)