「物情騒然。」に続く週刊誌連載エッセイ集第5巻。本巻には2002年の分が収録されている。
この年になると、小泉政権の独善性があらわに出てきており、著者は、たとえばこの時政府が進めようとしていたインフレ政策を終戦直後の異常なデフレに遭遇した自分の体験に照らし合わせて非難している。そして、根拠として当時の物価の上がり具合を提示してみせる。ただし、著者は終戦直後を暗くは描かない。そこには「もう空襲はこない」という安心感と「希望」があったから、ということだ。そして閉息した現代の日本にはその「希望」すらない。
その時々の状況をにらみながら書かれたものなのに、3年後の現在に読んでも違和感を感じない。著者の警告が的を射ているからであろう。著者はこの時点で小泉政権と政治家たちに見切りをつけている。私が身震いするのは、ここまで批判の種の多い小泉政権が、いまだに続いていることである。
観察眼と分析力の優れた著者ならではの同時代記録である。
(2006年4月25日読了)