「ダーティペアの大復活」に続くシリーズ第7巻。
WWWAトラブル・コンサルタントのユリとケイは、「バーバリアン・エイジ」というテーマパークへの潜入を命じられる。このテーマパークは剣と魔法の世界をハイテクノロジーで作り出し、そこの住人となって遊ぶもので、リピータは大量におり、本当にそこに住み着いてしまう者まで出る超人気テーマパークである。その「バーバリアン・エイジ」で、パークの規則にのっとりながら、しかしシステムにはないイベントを仕掛け、この遊戯システムを破壊しようとしている者たちがいるというのだ。ユリとケイはトラコンとしての装備を剥奪されたまま、ゲームのルールにのっとって入園し、そのルールに従いながら悪事の全貌を明らかにしなくてはならない。かくして魔法少女ユリと美貌戦士ケイとなった2人は、パークのスタッフ、ハワードの意識をコピーした魔物と頼りになる相棒のムギといっしょにまず最初の関門であるドラゴン退治をすることになるが……。
和製ヒロイックファンタジー第1号の「美獣」シリーズの作者が、今、こにゲームノベルのパロディのような作品を送りだす意味はなんだろうと考えた。若い書き手へのベテランからの挑戦か。そういう側面はあるだろう。ダーティペアを主人公にしたヒロイックファンタジーを書きたかったのか。それもあるだろう。
ただ、私は、現在氾濫しているゲームノベルに対し、作者が異議を申し立てているのではないかという気がしてならない。ヒロイックファンタジーの祖であるR・E・ハワード「コナン・ザ・バーバリアン」へのオマージュともいえる本作で、ゲームのルールという縛りによって自由な発想を封じてしまっている現在のヤングアダルト小説に対して、ヒロイックファンタジーの面白さはこういうものだと示しているのではないか。
本書ではまだ物語は完結していない。この物語が完結した時、初めて作者の意図が明らかになるのではないだろうか。間をあけずに刊行されることを期待している。
(2006年5月14日読了)