読書感想文


涼宮ハルヒの溜息
谷川流著
角川スニーカー文庫
2003年10月1日第1刷
2006年5月15日第16刷
定価514円

 「涼宮ハルヒの憂鬱」に続くシリーズ第2巻。
 俺たちが通う県立高校は文化祭シーズンである。SOS団では団長涼宮ハルヒの決定で自主映画を撮ることになった。主演はみくるさんで、彼女は正義の未来人という役回り。さらに長門は悪の宇宙人であり、古泉はみくるさんを助ける超能力者……。ちょっと待て、それって俺が先日ハルヒに告げた「真実」ではないか。主演女優をサディスティックにこきつかう「超監督」の涼宮ハルヒだが、映画を撮り進むうちに不思議な現象が起きはじめた。ハルヒ監督がみくるさんに「目からビームを出して!」と言ったら、ほんとに目からビームが出てしまったのだ。この世界の因果律はハルヒの願望によって変化してしまうのか? それを阻止できるのは俺だけだと古泉は言うのだが……。
 奇矯な美少女が巻き起こす珍騒動というスタイルでシリーズは進んでいくらしい。そこに自主映画という小道具を使用した作者のセンスが光る。虚構を現実化する道具として映画ほど最適なものはなく、涼宮ハルヒにとって虚構であるはずのものが周囲には現実と化して変化をもたらしてしまうという状態を示すにはうってつけなのである。
 さらに作者のセンスのよさを感じさせるのは、古泉に「これを虚構として完結させてしまうためには映画を『夢オチ』として結ぶしかない」というせりふである。現実と非現実のあわいである「夢」という小道具を自ら封じるとともに、この手を封じた上で「虚構を虚構として完結させる最上の方法」でラストを見事に締めくくっている。
 ヤングアダルト文庫の刊行ペースにあわせることにより、このセンスが磨耗しないことを願うばかりである。

(2006年6月16日読了)


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