「涼宮ハルヒの溜息」に続くシリーズ第3巻。
本巻は雑誌に掲載された短篇をまとめたもの。時系列的には1巻と2巻の間に入るべきものである。
常に愉快な状態でいないと世界を変容させてしまう危険があるという奇矯な美少女、涼宮ハルヒはその退屈な日々を解消すべく市民野球大会に参加することを決めてしまう。ところが俺の妹や朝比奈さんを含めたいいかげんな編成のチームなので、コールド負けは必至。ハルヒは当然不機嫌になり、この世界にひずみができてしまうことになり……。古泉はそんなハルヒに退屈を味わわせないようにSOS団の夏合宿の場として孤島の別荘を用意する。ハルヒは何か事件が起こらないかとわくわくしているが、果たして事件は起こってしまった。別荘の当主が密室殺人の犠牲となってしまったのである。むろん殺人が起きたと喜ぶハルヒではないが、明晰な推理で真相にたどりついてしまう。俺は未来の朝比奈さんの手引きで3年前にタイムスリップして当時中1のハルヒと出会ってみたり、ハルヒの作ったSOS団のマークのせいでパソコン部の部長が行方不明になる事件に巻き込まれたりと、高校入学半年にして愉快な目にあってばかりなのである。
個々のキャラクターの個性を際立たせるエピソードが展開され、長編の間のブリッジとしてはよく考えられた構成になっているといえるだろう。
作者の文章表現のうまさのひとつに比喩や形容の使い方があるのだが、本書を読んでいるとかなりいろいろなことについての基礎知識というか教養がないとその部分は楽しめないように思う。どうも作者はそこらあたり「ライトノベル」読者の層に対するサービスをしようという感じではないように思われる。私にはそのあたりで作品に対する好感度を高くもっていると感じさせた。
(2006年6月17日読了)