「涼宮ハルヒの消失」に続くシリーズ第5巻。
短篇3本を収録。「エンドレス・エイト」では夏休みの終りに涼宮ハルヒが組んだ夏を楽しむスケジュールにふりまわされるSOS団の姿と、その騒動に隠されたとんでもない真実を描く。「射手座の日」では分捕られたコンピュータを取り戻すべくオリジナルゲームで勝負を挑んできたコンピュータ研との熱い戦いと、その過程を経て少しずつ人間らしい感情が芽生えていく長門の様子が描かれる。「雪山症候群」はスキーを楽しむSOS団が突如遭難してしまい謎の洋館に迷い混むという一種の怪奇譚。
最初の2本で長門有希にあらわれる微妙な変化が伏線となって、前巻の騒動が起きるという仕組みになっている。つまり、雑誌掲載はこちらの方が早く、リアルタイムで雑誌も読んでいる読者にとっては別段どうということはないのだろうが、私のように後追いで読んでいる者にしてみたら、刊行順は逆にしていただきたかったと思う。もっとも最後の「雪山症候群」でこれまでと微妙に変わっているキョンのハルヒに対する接し方などは、前巻を呼んでいないとわかりにくい部分ではあるかもしれないが。
それにしても刊行ペースの早いこと。本書のあとがきで作者は急逝した吉田直さんへの追悼文を書いているが、他者の文庫も合わせてのこのハイペースだと、作者だってどうなるかわからないように感じられる。充電させなければ放電はできないのだから。
(2006年6月18日読了)