読書感想文


涼宮ハルヒの動揺
谷川流著
角川スニーカー文庫
2005年4月1日第1刷
2006年5月20日第8刷
定価514円

 「涼宮ハルヒの暴走」に続くシリーズ第6巻。
 短篇5本を収録。SOS団としては映画上映をしていた間に、ハルヒは何を思ったかバンドのボーカルとして舞台に上がった!(「ライブアライブ」) そして上映された映画とはどんなものだったのか(「朝比奈ミクルの冒険 Episode 00」)。俺の中学時代の友人が長門に一目惚れしたらしい。そいつのラブレターを口述筆記して読んでみせたら長門がそいつに興味をもって……(「ひとめぼれLOVER」)。「雪山症候群」事件のあとに行われた雪の山荘での余興はどうだったのか(「猫はどこに行った?」)。朝比奈さんからデートに誘われた俺は意気揚々と買い物につきあうが、どうも朝比奈さんの様子がおかしい。なんでそんなに時間を気にしているのかと思ったら、道路に出た子どもに向かって暴走車が突っ込んできて……(「朝比奈みくるの憂鬱」)。
 とうとうこういう巻が出てきたかという感じ。いかにも落ち穂拾いという感じは免れ得ない。人の苦境を救う涼宮ハルヒの心あたたまるストーリーに、「涼宮ハルヒの溜息」で作られた映画の『字で書いた絵コンテ』は、そのままアニメ化されて生きたけれども、活字媒体としてはわざわざ書く必要があったかどうかと感じてしまう。ましてや「雪山症候群」の続きのあまり上等とはいえない推理ごっこは、これこそ蛇足ではなかったか。長門有希と朝比奈みくるをフィーチャーした2編のみ、シリーズの伏線として生きるようなストーリーである。ただ、これらも続きが書かれなければ単独では特に印象に残るものにはならないだろう。
 人気があるから何でもいいから連載させるというのは、そこに新たなアイデアやストーリー展開が含まれていればの話であり、シノプシスの段階で編集者はある程度見識を示すべきだろう。ああおもしろいですねそれいきましょう的ノリでこういう将来有望な作家の才能を無駄遣いさせるべきではないと私は思う。そういう意味では、この短篇集は作者のしたたる才のしずくみたいなものであるように思われる。こういった作品群は雑誌掲載だけでお蔵入りさせておいてもかまわないのではないだろうか。
 「涼宮ハルヒの動揺」というよりは「谷川流の動揺」という気がするのだけれども。

(2006年6月20日読了)


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