読書感想文


涼宮ハルヒの陰謀
谷川流著
角川スニーカー文庫
2005年9月1日第1刷
2006年5月20日第6刷
定価600円

 「涼宮ハルヒの動揺」に続くシリーズ第7巻。
 最近のハルヒはなにやら考え事をしていてハルヒらしくない。節分の豆まきの時は生き生きしていたが、それが終ると元通りである。そんなある日、文芸部室のロッカーから突然朝比奈さんが現れた。本人の弁によると8日前、俺からタイムリープするように言われたという。しかも、そこで何をするかは8日前の俺が知っているという。そんなこと俺に言われても困る。その8日間のうちに何が起こるというのか。現在の朝比奈さんに会わせないようにしながら朝比奈さんを隠すには、やはり長門を頼るしかないのか。朝比奈さんの同級生である鶴屋さんに「朝比奈みちる」という双子の妹だと言い繕ってかくまってもらうことにする。そして、ついに指令はきた。もっと未来の朝比奈さんの手になる手紙が俺の下駄箱に入っていたのだ。任務を遂行しようとする俺たちの前に敵対組織が現れたりしてもう何が何やらわからない。そして8日後に明らかになるハルヒの陰謀とは!
 「消失」の時ほど凝った作りではないが、歴史改変を阻止するためにわけもわからず右往左往するキョンに対し、敵対者がその行動に疑念を持たせるような言動をし、そこで揺れ動くキョンの心情などがきめ細かく描かれている。また、未来に起こることを知ってしまっていることの虚しさという感覚などに見られるリアリティある描写もかんどころを押さえているといっていいだろう。
 作者の実力が十分生かされた長編である。

(2006年6月23日読了)


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