「学校を出よう! Escape from The
School」に続くシリーズ第2弾。
神田健一郎はナイフを握りながら血まみれになって自分の部屋にいた。その部屋にはもう一人の自分がいた。自分は3日後の世界から、もう一人は3日前の世界からなぜか同時にタイムスリップをしてやってきたのだ。しかも、この日に現実にいる神田健一郎もちゃんと存在しているらしい。つまり、同時に三人の自分が存在するのだ。現在の自分(神田N)と顔をあわすのを恐れた未来の自分(神田A)と過去の自分(神田B)は、超常現象研究会の星名サナエの部屋に転がり込み、彼女の全面的な協力を得てなぜこんなことが起きたのかの謎を解こうとする。自分とは全く無関係の少女誘拐事件に神田Nが首を突っ込んでいるらしいということはわかったが、自分がなぜそんなものに関わろうとしているのかもわからない。そしてとうとう3日目、神田Aがタイムスリップした当日になった! 果たして謎の真相は解明できるのか……。
作者は時間SFが好きらしい。本書のあとに書かれることになる「涼宮ハルヒの陰謀」は、本書と同じタイプのタイムリープ小説である。作者の好みはタイムパラドックスすれすれの緻密に組み立てられた構成のもののようで、本書はそこに量子論的解釈も加味しながらもつれた糸を最後に両側から引っ張って一気にほどいてしまうような解答を提示するのである。
本書はシリーズの2冊目ではあるが、前巻と共通しているのは舞台設定だけで、主要な登場人物はほとんどかぶらない。共通の脇役がほんの少し現れるだけである。つまり、本シリーズは同じ世界にすむ様々な人物が起こす混乱や冒険をオムニバス的に描くものになる、ということなのだろうか。
第1巻はさほど面白いとは感じられなかったのだが、それを吹き飛ばすような時間SFミステリを2巻目にもってくるところなど、この作者はやはりただ者ではないようである。
(2006年7月6日読了)