読書感想文


学校を出よう! 3 The Laughing Bootleg
谷川流著
メディアワークス電撃文庫
2003年10月25日第1刷
2003年12月15日第2刷
定価550円

 「学校を出よう! 2 I-My-Meに続くシリーズ第3弾。
 第三EMP学園の女子寮で、同室の同級生が行方不明になったと騒ぐのは蒼ノ木類という生徒。生徒会の真琴が相手にしないこの少女の捜索願を引き受けることになった光明寺茉衣子は、先輩の観音崎滋とともに捜索を開始する。滋の推理で少女消失の謎は解けたが、実はこの事件はただの幕開けに過ぎなかった。今度は消失ではなく、転学した生徒たちが再び寮に出現しはじめる。そして、なんと茉衣子が2人に増えるという事態に。2人どころか、保安部の先輩で彼女が最も毛嫌いする宮野のもとには自分そっくりの少女が彼にかしずき、真琴のそばではもう1人の自分がかいがいしく働いている。果たしてこの人口増加騒動はどのようにすればおさまるのか……。
 物語そのものはそれほど起伏があるというわけではなく、多少散漫な印象を受けるが、もう1人の自分が現れた時に、人はどのような反応を示すかという実験としては、作者の人間観察の確かさがあらわれていて、面白く読めるように仕上がっている。
 作者は決してストーリーテラーとはいえないが、ロジカルな設定と巧みな人間描写でその欠点をみごとに補っている。本書もまた、その好例であろう。だから、ストーリーがうまくできた作品は非常に面白いものになるのだと、本書を読んでより強く確信した次第だ。

(2006年7月8日読了)


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