読書感想文


学校を出よう! 4 Final Destination
谷川流著
メディアワークス電撃文庫
2004年3月25日第1刷
定価630円

 「学校を出よう! 3 The Laughing Bootlegに続くシリーズ第4弾。
 第三EMPの宮野と光明寺のコンビに生徒会長代理真琴から下された指令は、仲嶋数花という少女を探し出して連れてこいというものだった。彼女は数日前に家出をし、行方はしれない。EMP波が間歇泉のように出るためにそれを探知して後を追うのだが、たどりついた時にはもう別の場所に移っている。数花を追っているのは宮野たちだけではなかった。第二EMPからは蜩と喜多高のコンビが、第一EMPからは枕木が……というように各学園からそれぞれ要員が派遣され、どこが先に数花の身柄を確保するか競うような形になっているのだ。宮野たちと蜩たちは競いつつも共同で捜索にあたる。一方で枕木はどこに潜んでいるのか姿を見せない。いったいなぜ3つのEMP学園が彼女を探すことになったのか。彼女のもつ重大な秘密とは。そして、この不可解な追いかけっこの結末に待っていたものは……。
 多元宇宙をアイデアの核としているのだが、それは量子論とは全く違う考え方の世界観である。作者は意図してこの多元宇宙のアイデアを考え出したのだろう。種明かしになるので書かないが、非常にユニークな形で平行世界を扱っている。
 かなり理屈っぽい物語なのだが、ここに追いかけっこという要素を物語の中心に据え、読み手をうまく物語り世界に導いていっている。いわばロード・ムービー的な面白さを狙ったもので、こういった古典的な手法をうまく使いオリジナリティのあるものに仕立て上げるところに作者のうまさがある。しかも、シリーズの中で一番理屈っぽい宮野を活躍させることによって、アイデアの説明をだれさせなくしている。
 ただ、ここまでくると、EMPというものの正体などの大前提となる設定についての解決編がこないと話がまとまらないだろうという気がする。作者はどこに着地点をおいているのか。続巻以降に期待したい。

(2006年7月16日読了)


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